今も昔も、願いはいつだってひとつなんだ。






この命ひとつ捧げるだけで終わる争いなら、いつだって簡単な筈だった。
けれど人々の憎しみは連鎖し、事は次第に大きく膨れ上がってしまった。
いつしか矛先を見失った悲しみが多方面に広がり、そうして関係のない人の涙が流れる様を数え切れないほど見てきた。
遣りきれない思いのまま、それでもただ通り過ぎることのほうが多かった過去。
全てを救うことなど出来なくても、せめて目の前の悲しみくらい拾い上げるべきだったのだろうかと、いつも思っていた。

この手で何度誰かの命を奪ってきただろう。
剣を振らなければ自分が殺されるのだとしても、それ以外の理由を突き詰めてしまえば、きっと自分はもう二度と剣を取れなくなるだろうと思った。
殺されないために、守りたい人を守るために。
それだけの理由なら、こんな戦場にいる必要はない。

それなら、此処にいる理由は。

真実から目を逸らしたままではいつか歩けなくなる。
そうしていつか立ち止まってしまったとき、大切なものを失ってしまうことに俺はきっと耐えられないと思うんだ。
だから、傷つくことは怖くない。
結局、いつかは越えなければいけない壁なら、俺は越えたいと思うから。
この道は、立ち止まりまたいつか歩き出した先で新しい道が作られるために、必要な道なんだよ。

だから、俺はあなたの傍を離れることを決めたんだ。

解ってる。
誰しも傷付くために生まれた訳じゃない。
沢山の矛盾や傷を抱えて生まれて、それでも幸せになりたいと泣くんだろう。
だから、俺は俺のためにこの道を選んだ。
身体の傷なら、死にさえしなければいつかは癒える。
そして、腕や足を失っても、傍にいることなら出来るんだよ。

そんな考えを、あなたは怒るかも知れないけど、こればかりは仕方ないんだ。
だからと言って、自虐的な思考かと言えばそうでもないんだよ。
あなたが悲しむことはちゃんと理解しているから、大丈夫。

俺は俺を、ちゃんと守るよ。
どんな戦局でも、最後まで決して諦めないことをあなたに誓うから。
どうか、俺にあなたを守らせて欲しい。

ユーリ。
俺の、生きる希望を。

今は未だ、あなたに伝えることは出来ないけど。
いつか全て、あなたには話すから。



今はただ、この思いだけを胸に誇りながら。















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2005.04.12
愛さえ、今では越えてしまったような。


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